今昔物語集他
コロナ禍との戦いはまだ中盤にさしかかったばかりです。かつて菅原道真が天神として祀られた当初は疫病退散の神でした。そして、三大鬼退治説話とされる「酒呑童子」「桃太郎」「一寸法師」に登場する鬼の原像は「疱瘡(ほうそう=天然痘)」だったという説があります。
もともと鬼は「目に見えない邪気」つまり、病気や災害、飢餓などを指しましたが大陸との交易船も出入りする港では、とりわけ強い感染力を持つ疱瘡(天然痘)の上陸が恐れられました。この不安から現在の大阪天満宮周辺の大江では「疱瘡封じ」の儀式が行われ、疱瘡が京の都に広がる中で舞台が同じ地名の丹波の大江山に移り、鬼退治の物語として語り継がれたといいます。医学がなかった時代、人々が天然痘に罹患した人の面相に鬼を重ね合わせたのかもしれません。
参考:酒呑童子の誕生―もうひとつの日本文化 (岩波現代文庫)
平安時代に鬼に接した「紀長谷雄」(きのはせお)のエピソード、「長谷雄卿草子」「今昔物語集24-1」「今昔物語集24-25」を掲載しました。メニューの『今昔物語集他』よりご覧ください。